初めて手を繋いだのは、バンクーバーのキャピラノ渓谷だった。高さのある吊り橋を前に怖気づいたときだ。
頼もしい彼の手にドキドキしたのが昨日のことのように蘇り、美織の鼓動とリンクする。自分が今いる時間軸がわからなくなるほど胸が高鳴りどうにもならない。
(史哉さん……)
心の中で呼ぶ声は、永遠に彼には届かないだろう。史哉が欲しているのは美織ではなく陽向だ。
手を引かれるまま緩やかなスロープをゆっくりと下り、この水族館の一番の人気者、ジンベエザメのいる水槽までやって来たことに気づいたのは陽向の歓声を聞いたときだった。
「おっきい!!」
美織たちのすぐ横をジンベエザメが悠然と泳いでいく。堂々とした姿に目を瞠る。
「写真撮ろうか」
不意に手を解かれ寂しさに包まれたのは、心がすっかり過去に飛んでいたせいだろう。
もっと繋いでいたいなんて願い、抱いても仕方がないのに。どうかしている。



