調査で状況や内容の把握をするのは水族館ではなく、あくまでも美織本人だが。
再会以降、史哉に対する彼女の警戒ぶりは相当なもので、固く閉ざした心が解ける気配がまるでない。
バンクーバーを一緒に観光したときより遠く感じるのがつらいところである。
どうしたら美織に近づけるのか。頑なな気持ちは解せるのか。
ふと彼女の顔が脳裏に浮かぶ。
研ぎ澄まされた知的な美しさはあの頃と変わらない。――いや、大人の色香を身につけ、やわらかな母性まで兼ね備えた彼女は史哉にとって無敵の女性と言ってもいい。
その姿を思い浮かべるだけで、胸の奥が尋常でないほどに高鳴る。
だが焦るな。
気持ちを無理に探ったり、あの別れの真実を問いただしたりすれば、美織は余計に心を閉ざすだろう。
まずは陽向との距離を縮めるのが得策。ダシに使うといったら語弊があるが、息子と良好な関係を築けば、おのずと美織も史哉への警戒心を解いていくだろう。
もちろん陽向は大切だし、愛しい存在である。三人で歩く未来を手にするためには慎重に進めるのが一番だ。
「私も同行したほうがよろしいでしょうか」
「いや、大丈夫だ。その必要はない」
大真面目に尋ねる理恵子に小さく笑って返した。



