花火を終え、美織と陽向は、アパートまで送っていくと言ってきかない史哉に強引に車に乗せられた。
ふたりが暮らす部屋は工房から歩いていける距離にあるが、わずかな時間でも一緒にいたいと請われれば強くは拒めない。陽向に向かう史哉の愛情は、美織に対するときとは違って偽物ではないだろうから。
彼の新車の後部座席には、陽向が乗るためのチャイルドシートまでしっかり用意されていた。
陽向と並んで座ってすぐ、車が発進する。
「このまま一緒に食事でもどう?」
「……すみません。夕食は朝、準備してきたので」
不意打ちの誘いに鼓動が跳ねたが、取り澄まして返す。美織は毎朝できる限り夕食の下ごしらえをしているため、決して嘘ではない。
「そう。それは残念だな」
史哉の曇った顔がルームミラーに映る。
素っ気ない返答を申し訳なく思ったが、そういう誘いにどう返したらいいのか。
史哉が陽向と交流を図りたいのも、それを邪魔するのも酷だと頭ではわかっているが、心がついていかない。
史哉にとって陽向は大事な息子に違いないが、美織は単なる元カノに過ぎないから。それも遊び半分で付き合っていた女だ。



