「美織? どうした?」 付き合っていたあの頃と同じ穏やかな眼差しを向けられ、一瞬自分の立ち位置を見失う。史哉と恋人同士だった当時に心がさらわれた。 「史哉さん……」 思わず情感を込めて名前を口にした直後、「ママ」と陽向に呼ばれて我に返る。 (私ってば、どうかしてる) ふたりはとっくの昔に終わっているというのに。 彼からサッと目を逸らして陽向を見た。