「んじゃ、夫人でいいだろ──」

「あっ……」

 再び声を上げるモモ。

「何だよ、またおめでただって言うのか?」

「ほぉ、モモ、いつ気が付いた? 実は昨日正式に報告があっての。妊娠三ヶ月だそうだ」

「「えぇっ!!」」

「あらん~私とおんなじ」

 あの時の具合の悪さはつわりだったんだ──モモは改めて夫人の部屋での『あの時』を思い出し、良い結果に嬉しくなった。

 が、凪徒の方は──。

「……マジかよ……」

 よっぽどモモと二人きりの旅行がお気に召さないらしい。

「貴方、大学中退前にロシア語取ってたじゃない。たまにはモモちゃんの役に立ちなさ~い」

「取ってたって、一般教養の第二外国語だ! それも半年!! 大体『たまには』って何だっ、『たまには』って!?」

「相変わらず突っかかるわねぇ」

「お前がけしかけてるんだろうがっ」

「まぁまぁ二人共、姉弟(きょうだい)喧嘩は──」

「「姉弟じゃなくて、親子です!」」