とある日。

もう忘れたけど,多分雨が降ってて。

ちょっと蒸し暑い。

そんな日。

俺は1つ年下位の,男を拾った。



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高2の,やたら顔の綺麗なそのガキは,昏い目をしていて。

だぼっとした白T,ジーンズ。

どちらも雨でびっちゃびちゃ。

この辺りは校則に厳しいと言うのに,耳には金色のピアス。

関わらない方がいい。

そんなのは分かってた。

男は舗装された道のはしっこに,電柱に肩を預け座っていた。



「はぁ,ほらよ」



俺はたまたま差していた藍色の傘を差し出す。

しゃがんで顔を合わすなんてことは,わざわざしてやらねぇ。

ゆっくりと,顔をあげたそいつと,目があった。

人間()を映している割には,変わらず昏い瞳。

こんな人目につく場所にいながらそんな目をしているそいつをみて,俺は更に気分が悪くなる。

ハッ…やっぱガキだわ。

顔はそこそこのくせして,まず先に目につく男の特徴は,よりガキに見えた。



「立て」



手が痛くなり,更に面倒になり。

俺はそいつに言葉を向ける。

男はようやく俺を認識したように目を丸くすると,ザッと立ち上がった。



「…なに」

「着いてこいってんだよ。お前に傘渡したら,俺が濡れるだろーが」

「いや,俺いらな」

「あ? まだ文句あんの? お前どうせあれだろ,高校一緒,そんな気がする。めんどくせー教師に報告されたくなかったら黙って着いてこい」

「…はぁ,分かった」