「な、何でもない…ゴメンね。心配かけちゃって」
「…?変な顔して…どうかしたわけ?」
そう言って怪訝そうな表情を浮かべる彼の目にその時の私はどう映っていたのか。
自分としては、普段通り笑っているつもりだったけど…。
「なっ…!へ、変な顔って…」
「だって、本当のことだし。その微妙な顔はなに?つか、季里は心から笑ってる顔が1番可愛いと思うけど?」
「……」
…ん!?今、可愛いって言った…?
シレッと表情1つ変えず、充希くんがそんなセリフを言ってのけるものだから聞き間違えかと、反応がワンテンポ遅れてしまった。
なんだか最近…いや、ちょっと前からか、充希くんの態度が優しい気がするのは私の気の所為?
ドキドキと高鳴る心臓の音を振り払うように私は、チラリと充希くんに視線を向ける。
すると。
「西宮…」
彼の視線は私を通り越し、その後ろにある石垣の門に掲げられた表札に向けられていた。
目を見開いて、表札を凝視する充希くん。
おそらく彼も気づいたのだ。
ここが颯真くんのおばさん…玲子さんの家だってことを。



