「それならいいけど…もう。昔は可愛かったのにねぇ。中学生くらいになってから反抗期で…あら。そう言えば緑葉谷高校って玲子の甥っ子の颯真くんも通ってたわよね?もしかして季里ちゃん、颯真くんとも知り合い??」


ドキン


唐突に和音さんの口から出てきた颯真くんの名前に私は一瞬、固まった。


そうだよね…和音さん、玲子さんと仲良しだし、颯真くん元々こっちに住んでるんだもん。会ったことあっても不思議じゃないよ。


「…はい。颯真くんが、小学生の時は私の住んでる島に夏休み遊びに来てたんです。玲子さんもいるし…」


なるべく平静を装って、和音さんの質問に答える私。


「まぁ!そうだったの!そしたら季里ちゃんも学校行くの安心ね。知り合いがいるなら心強いわ。充希も小さい頃はよく颯真くんに遊んでもらってたのよ〜。昔は家も近所でね?まぁ、颯真くんのご両親が離婚されてお母さんの満里奈さんと一緒に引っ越しちゃってからは疎遠になっちゃって。最近じゃどうしてるのか私もよく知らないのよ。玲子も連絡しても音沙汰ないって言うし」

と、少し心配そうな表情を浮かべ、和音さんは呟いた。


「…そうですね。私ももう随分会ってないです。当時はスマホとかもなかったんで連絡先も交換してなくて…一応、玲子さんのスマホで私が緑葉谷に入学すること伝えてもらったんですけど、既読つかないって言ってたからもしかしたら気づいてないのかも…」


「そっかぁ。そしたら、久々に会ったらきっとビックリするわね」


楽しみね!と、満面笑顔の和音さんとは裏腹に私は曖昧に微笑む。


そんな私を、充希くんがジッと見つめていたことにこの時の私は気づいていなかったんだ。