見慣れた島の景色に私は目を細めた。
「うちのお母さんが港まで車で迎えに来てるみたいだから、荷物乗せてまずは旅館の方に行こうね」
「旅館か〜。ホテル以外はあんまり泊まったことないから楽しみ。温泉もあるんでしょ?」
「そうなの。そこ日帰り温泉もあってね、私も時々温泉だけ入りに行ってたなぁ…」
そういえば小さい頃は、玲子さんと颯真くんとよく一緒に入りに行ってたっけ?
ふいに思い出した記憶に私は小さくため息をこぼす。
ずっと颯真くんと仲良くいられると本気で信じていたあの頃。
当時は小学生だったから、考えればたった数年前のことなのに…なんだか随分昔のような記憶だ。
今は無理でも、いつかもう少し私たちが大人になった時、「当時はあんなことがあったね」と颯真くんや玲子さんと笑い合える日がくればいいな。
そんな淡い期待を胸に秘め、私は真凛ちゃんに「荷物取りに行こうか」と声をかけたのだった。



