若干、霧谷先輩を不憫に思いつつ、私は小さくため息をついた。

「季里、大丈夫かな…?」

1人で色々、抱えこまないといいけど…。

不意にそんな不安が脳裏をよぎる。

今日の季里から聞いた話は、びっくりする内容ばかりで私もまだ整理がついてないないのが正直なところ。

だって、あの久瀬先輩が、季里が会いたがっていた男の子だなんて…予想外すぎるわ。


 ◇◇◇◇


『実はね。私がこの高校に来たのは、昔、仲が良かった颯真くんって男の子に会いたかったからなの…』

季里はそう言って話し始めた。

最初は私自身「え!何そのドラマみたいな話は!?」と内心ドキドキしながら成り行きを聞いていたのだが…。

『…それで久瀬先輩が颯真くん本人だったんだ』

『…っ』

曖昧に微笑んだ彼女の表情を見た私は、胸が締め付けられるような感覚に襲われる。

1回否定しといて今更、正体バラすって何それ。それなら最後まで隠し通しなさいよ!