恋と、嘘と、憂鬱と。


今、思い出すとあれが颯真と別れるきっかけになったんだと思う。

『…ねぇ、颯真…実はこの前…颯真の部屋でね。辞書借りようと思って本棚を探してたんだけど、下の方に箱があって…。見るつもりはなかったんだけど、持った拍子に落として中身散乱しちゃって…手紙が入ってるの見ちゃったんだ。勝手に見てごめん…あの手紙女の子から…だよね?友達??』

結局、あの日に見た手紙のことが心のどこかで引っかかっていて。

一緒に勉強した日から数日経ったある日の放課後。

意を決して颯真に聞いてみた。

『あぁ…懐かしいな。それ、昔の友達からの手紙だよ』
そんな返答を期待して。

けど。

『……っ』

その期待は颯真の表情を見て一変する。

私の問いかけに一瞬目を見開いた彼は、小さくため息をこぼした。

『…そっか。中身も見た?』

『ううん。すぐ戻したから…読んでないよ。見たのは便箋だけ』

フルフルと、首を横に振り否定する私をジッと見つめる颯真。

その表情を見た瞬間、私は颯真と初めて会った空き教室での彼の表情を思い出す。

あぁ…。そっか。颯真って、初めて会った時から私じゃない誰かを見てたんだ。

そして、それはたぶん、あの手紙の送り主なのだろう。