いきなり名前を呼ばれて正直、ドキッとしたがこれもある意味充希くんなりの距離の縮め方なのかもしれない。

そう考えると、彼の行動が可愛くて自然と頬が緩む。


「もう、急に呼び捨てするからびっくりしちゃった。でも、名前呼んでくれて嬉しいよ」


「……るんだけど」


「え?何か言った??」


小さくボソッと呟く充希くんの声が、聞き取りづらくて思わず聞き返した私。


キョトンとする私を一瞥するも。


「……なんでもない。それより、そろそろ夕飯作るから季里はカウンターにでも座って待ってて」


と、はぐらかし、キッチンに足を進めた充希くん。


「う、うん!わかった、何か手伝えることあったら言ってね」


キッチンに向かう後ろ姿にそう声をかけつつ、私は彼に言われた通りカウンター席に腰を下ろした。


正直、先程聞き取れなかった充希くんの発言が気になってはいたが…。


本人が「なんでもない」って言ってるのに蒸し返すのも良くないよね。


そう思い直し、私は、夕飯ができるのを待つ間、和音さんのメッセージに返信をしようとスマホを取り出したのだった。