現状、当時の颯真くんを知っているのは、こっちでは私と、充希くんと、和音さんだけ。

それに、彼との付き合いで考えれば夏休みの1ヶ月間だけの付き合いの私なんかより、二人のほうがずっとずっと一緒に過ごしてきた時間は長いのだ。


…充希くんも、久瀬先輩のこと颯真くんだって思ったのだとしたら…私ももっと確信を持てたかもしれないけど…。


そんな淡い期待が、無意識に芽生えていた、そんな自分に思わず心の中でそっとため息をつく。


しかし、そんな気持ちを振り払うように。


「…充希くん、皆、そろそろ食べ始めちゃうみたいだし一緒にお昼にしよう。それにね、デザートのケーキも美桜先輩たちちゃんと充希くんのぶんまで買ってきてくれてるし」


と、できるだけ明るい口調でそう声をかけたのだった。