「…それで、知ってるの?知らないの??」
上手く言葉が出ずに固まっている私を尻目に充希くんは霧谷先輩に質問を重ねる。
「…悪いけど西宮颯真っていう生徒はうちの学年にはいないよ。…けど、颯真っていう名前の生徒はいる」
霧谷先輩が、真っ直ぐに充希くんを見据え、そう声を発した瞬間だった。
「……え、嘘でしょ」
ポツリと消え入るような声で呟いた充希くん。
大きな瞳がさらに見開かれ、私と霧谷先輩の後ろ…、店内へと続く入り口付近に向けられている。
不思議に思って、私は彼の視線を追うようにクルリと、後ろを振り返った。
「久瀬、先輩…?」
充希くんの視線の先にいたのは、久瀬先輩で……。
「…霧谷、遥奈先輩達が早く来いって呼んでる、ついでにあんたも」
けど、先輩自身は、キッチンで立ち尽くしている充希くんを気に止めることもなく、いつものように霧谷先輩と、おまけで私に声をかける。



