そもそも先輩が持ったことあるような感情を知らないような俺が、好きな男がいる女を好きになるほどバカでもない。
それでもなぜだか、この不憫でどうしようもない先輩が早く浦野のことなんて諦めついちゃえばいいじゃんと思った。

好きになろうがならまいが、この人と一緒にいる時間は退屈ではない。
たった一時間も一緒にいなかっただけで、そう思わせるこの人はもしかしたら貴重なのかもしれない。




「莉子センパイ」

「うん?」

「はやく諦められるといいっすね」

「はは、同情?優しいコーハイ」


真っ白な素肌を全部隠して、先輩は俺に笑いかける。
なんとも生意気な上から目線にムカつくけれど相変わらず顔だけはやっぱりタイプだった。



「好きになってね、わたしのこと」

「そっちこそはやく落としてみてくださいね、俺のこと」






期限はなし。
勝敗はどうやって決めるのか、俺が彼女に恋をしたら負けで、彼女以外に恋をしたら俺の勝ち?




―――そんな意味の分からない暇つぶしに誘われたせいで、俺の日常は容易く壊れていったのだ。