変態御曹司の飼い猫はわたしです


 さっと髪を乾かしバスルームを出ると、この部屋の圧倒的な広さに驚いた。さすがハイクラスホテルのスイートルーム。

 ベッドルームの他に、豪華なソファが置かれたリビングが広がっており、その大きな窓からは、キラキラと輝くビル群が宝石のように光っている。

(素敵……!!)

 仕事は辞めてしまったし、自宅は燃えてしまったけれど、それが夢だったかのような錯覚に陥りそうだ。落ち込んでいた気持ちが、グンと浮上していくのが分かる。

 そこへ、女性スタッフが数名入室してきた。

「お召し物をお持ちしました。宜しければヘアメイクなどもサービスさせていただきます」
「あ、ありがとうございます」

 用意してくださったのは、光沢のあるピンクベージュのロング丈ワンピース。さりげないリボンのウエストマークが可愛らしいデザインだ。

 ドレッシーなワンピースが間違いなく高価なものであることは、上質な生地感で感じ取った。そして、ワンピースに合わせたアクセサリーや華奢なパンプス、ラメの入った小さなバックも用意してくれている。

 着替えだけでなく髪の毛もメイクも整えてもらった。まるでどこかのお姫様にでもなったかのようだ。至れり尽くせりのサービスに恐縮してしまう。

 そしてあっという間に、私はどんなパーティーに出ても恥ずかしくない程、飾り立てられていた。

「これは、見違えたね」
「!?」

 いつのまにか、一ノ瀬さんが入室している。スタッフの誰かが招き入れたのだろう。

「では、参りましょう、お姫様」
「あ、ありがとう、ございます」

 そして私は本当にお姫様のように、王子様よりもっと素敵な紳士にエスコートされて、憧れのフレンチレストランに足を運んだ。

 思えばこれが、私の運命が変わりはじめた夜だった。