「いっぺんに話しかけられちゃ、答えられるもんも答えられないぜ」
と、ねこはちさんは笑っている。



「ネコの爪みたいな三日月さんに、ずっとお祈りしていたのさ。そしたら、どうだ?魔法みたいに人の言葉を話せるようになったってわけさ」



ねこはちさんは嬉しそうに語る。



「オレには飼い主なんていないけれど、人の言葉を話せるようになった時、ある小説家のダンナと知り合ったのさ。家に泊めてくれるっていうし、どうせだったら学校にも行きなよって言ってくれて、本当に感謝しているんだぜ」

「三日月にお祈り!?」

「へぇー!すげー!」

「小説家なんて、この町に住んでるんだ!?」



ざわざわする教室。

私はひとり、自分の席に座って。

ぼんやり、みんなを見ていた。



ねこはちさんと、ねこはちさんを囲むクラスのみんなの背中。



(私は、あの輪には入れない)



ひとりぼっちは慣れているけれど。

やっぱりつまらない。



(いいな、ねこはちさんは)