学校の帰り。

私はドギマギしながら。

二丁目の、あの家を目指して歩いていた。



(小町さんに、知らせなくちゃ)



なぜだか、強くそう思った。



ねこはちさんが、もしかして帰って来ないんじゃないかって。

何か危険が迫ってるんじゃないかって。

不安で仕方がなかった。



小町さんに知らせたら。

きっと何か、良い方向に向かう気がしたんだ。



自分を。

家族を。

守るために、生き方を変えた小町さんだから。

今度だって……。






あの家の前まで来た。

窓辺に。

右耳に灰色のブチ模様の美しいネコ。



(小町さんだ)



「小町さん、あのっ……」



庭を挟んだ家の外から声をかけたって、聞こえるはずなんてないけれど。

呼びかけずにはいられなかった。



「小町さんっ!」



小町さんは、じっと私を見つめている。

それからニャーニャーと、鳴き始めた。