空が赤くなっていきた。

夕日の周りにカラスが飛んでいる。



私達は公園から出てきて、住宅街を歩いていた。


「んー?寅山 朝子……、とらやま あさこ……」



ねこはちさんが思案顔で、私の名前を連呼している。

それから、
「あっ!」
と、小さく叫んで、
「とらこ!!「とら」やまあさ「こ」で、とらこでいいじゃねぇか!」
と、ひとり納得している。



「えー、もっと可愛い呼び名がいい!」



私はほんの少し不満。

そんな私の手をぎゅっと握って。

ねこはちさんは言った。



「いいんだよ、コレで」



大人みたいな表情で。



「強そうだろ?強くなれそうだろ?」



そう言ったねこはちさんが。

知らないネコみたいに見えて。

なんだか淋しい気持ちになった。




「じゃあな、とらこ」



私の手を離して。

ねこはちさんは手を大きく振った。



「うん、またね」



そう言ったけれど、ねこはちさんは笑顔を見せて、何も言わず走って行ってしまった。