「交通事故に遭ったんだってよ」

「そんな……!」



ねこはちさんは、空を見上げた。



「小町さんは、だから人間に助けを求めたんだと思う。お腹には子どもがいたから、父さんのように自分も事故に遭わないように。生まれてくる子どもも、事故に遭わないようにって考えて、飼いネコになる決意をしたんだ。家の中に居れば、交通事故に遭うことはないからな」



そう言って、ねこはちさんは私を見た。



「生まれた子どもはみんな、あの家の人間の知り合いに貰われてさ、きっと飼いネコとして暮らしている。多分、安全に」

「でも、ねこはちさんはなんで……?」



私の質問に、ねこはちさんは笑った。



「オレは飼われるのは苦手だぜ。すぐに逃げ出したから、元の飼い主の顔だって覚えてないんだ。……小説家のダンナは、飼い主という感じがしなくて、居心地が良いんだ。だから一緒に住んでいるけどな」



ねこはちさんの笑顔を見て。

ねこはちさんに小説家さんがいて良かったって、心から思った。



「……小町さんにも」
と、ねこはちさんは続ける。