「ねこはちさん、誰なの?」
と、こっそり聞いてみる。



ねこはちさんは、
「小町さん。オレの母さんだよ。二丁目に住んでいるんだ」
と、短く答えた。



「えっ!?」



ねこはちさんの、お母さん!?



「じゃ、じゃあ、一緒に住んでいるの?」

「いや。オレは小説家のダンナと一緒に住んでるぜ。小町さんとは、たまに会うくらいさ」



そう言ったねこはちさんは淋しそうな表情で、
「小町には、小町さんの生き方があるしな」
と、遠い目をした。



その視線の先には、小町さんがいる。




ふと、何かに気づいた様子でねこはちさんが、
「おい、学校のみんなには内緒だぜ。心配するといけねぇから」
と、少しだけ慌てた。



「でも……」

「オレは大丈夫だ。ネコだからな。気ままに生きてぇよ」



(……でも。ねこはちさん、苦しそうだよ?)



「オレの父さんは、もうこの世にいねぇんだ。ノラネコ同士で小町さんと出会ったらしいけれど、小町さんの目の前で死んじまったらしい」

「えっ!?」