「どうしたの?」
と、思わず聞いてしまう。



「すまねぇ。きょうだいに似ていたから。でも違ったみたいだ」

「きょうだい?ねこはちさん、きょうだいがいるの?いいなぁ。私はひとりっ子なんだ」



ねこはちさんは少しだけ笑顔を作って、
「兄弟姉妹は、たくさんいるんだ。だけど、今生きているのか、死んでしまったのかすら知らねぇんだ」
と言って、うつむいた。



「え……」



ねこはちさんはベンチに座り直した。



「オレらは生まれてすぐにバラバラになってるんだ。まぁ、生きるためだよ。仕方ねぇよな」

「どういうこと?」



背後で。

どこかのおばさんが、
「小町ちゃん、いいお天気ねー」
と、言った。



ねこはちさんは、勢いよく振り返る。

私も一緒に振り返ると。

そこには、あの日見たネコが、おばさんに抱っこされていた。



あの日。

ねこはちさんを初めて見た日。

二丁目のどこかの家の窓にいたネコ。

ねこはちさんが外から見つめていた、あのネコ。



ネコがねこはちさんに気づいた。

ねこはちさんは、あの日と同じように一礼した。