これは、噂で聞いた話。

猫の爪みたいな三日月の夜。

強い思いでお祈りをしていたら。

願いが叶うんだって。



……嘘じゃないかって?

私、寅山 朝子(とらやま あさこ)も本当は信じてなかったけれど。

あの日、信じるようになっちゃった。

そう、あの日。

猫野 八助(ねこの はちすけ)、通称・ねこはちさんに出会った日。



だって。

ねこはちさんは。

お祈りをしたおかげで。

人の言葉を話せるようになったんだもの。






雪が降りそうな朝。

お布団からなかなか出られなくて。

遅刻しちゃいそう!

かけ足で小学校へ急ぐ。



二丁目のあるお家の前。



(えっ!?)



思わず立ち止まって、二度見しちゃった。

だって。

ネコが……!



「二本足で立ってる!?」



思わず出た声を口の中に戻すみたいに、私は両手で口を覆った。



そのネコは。

お家の窓のところをじっと見つめている。