ついに四人で飲む日になった。ひなこは店に着き、今度は大衆居酒屋かと思った。

お座敷に通され、ここなら初めての人とも話しやすそうだなと思った。

ひなこがしばらく待っていると、知らない男の人が「はじめまして」と入ってきた。

すごく爽やかでいかにも小日向さんとは正反対な雰囲気を纏っていた。

名前は杉村ということを聞くと、「あまり歳は変わらないので、玲央でいいですよ」と言った。

ひなこは話しやすそうだなと安心した。玲央は「まだ二人なので、隣に行っても良いですか?隣の方が話しやすいと思うので」と言った。さらに「上司が隣だと何かと気を遣うので」とお茶目な事を言って可愛い笑顔をこちらに向けた。

いかにも子犬系男子という感じで、ひなこのモロタイプだった。ひなこはその笑顔にキュンとした。

そして二人で先に乾杯した。どこ出身なのかや、仕事の様子など意外とプライベートな所にも踏み込んで話していると、玲央には彼女がいないことが分かり、「お互い良い人が見つかるといいですね」ととても良い雰囲気だった。

そこへ少し遅れて小日向さんが部屋に入ってきた。

玲央はすぐに姿勢を正し、「お疲れ様です」と言うので、ひなこはさすがだなと思った。

小日向さんは二人が隣同士に座っているのを見て、なんだか気に食わなかった。

なぜ四人席で最初に隣に座ることになるのかと軽い杉村のせいだろうなと宇賀山を恨んだのだった。

さらに小日向はひなこが杉村のことを「玲央さん」と呼び、杉村はひなこの事を「ひなこ」と呼んでいたのでさらに頭に血が上った。

なんだか二人が自分がいない所で盛り上がっており、イチャイチャしてたと思うと居ても立っても居られない気持ちになったのだった。

そして最後に美織が相変わらずの大遅刻をかまして、場の笑いを誘った。

四人で乾杯し、早速、世話話をした。

そこでは主にひなこと玲央が会話していた。元々、ひなこは社交的なので、こういう時は人一倍、相手に楽しんでもらおうと頑張って喋っていた。

一方、玲央も同じタイプで、冷めた場を何度も盛り上げたことがあったので、お手のものと言わんばかりに沢山喋っていた。

しかし、美織に小日向さんの会社での様子や周りの女の子の事を聞かれ、正直に「課内にこころさんっていう、圧倒的美人がいますよ」と言った。

小日向はこいつ余計なことをと思った。そして案の定ひなこの顔を見ると、険しい顔をしていた。

ひなこは知りたくなかった名前が分かってしまい、さっきまでの元気を失ってしまった。

そして気を取り直すためにトイレに行ったのだった。

戻ってくると美織が場を回しており、何とか元の状態になっていたので、ひなこは安心して戻ることができた。

いくらか時間が経ち、二軒目に行くかという話になった。

ひなこと玲央は行く気満々で行くことにした。

小日向は悩んだが、悩んでいるうちに二人が酔いのテンションで先に行ってしまったので、結果的に行かないことになった。

残った美織に、「あれ、いいの?てか何で連れてきたのよ。ああいうのひなこのモロタイプだよ」とタメ口をきいた。

小日向はタメ口などは気にせず、「僕も分かりません」と言ったのだった。