朝、会社に行くと、いつものように小日向と宇賀山は楽しそうに喋っていた。

楽しそうにと言っても、一方的に宇賀山が小日向に絡んでいるだけであった。

こころは周りの人に「おはようございます」と丁寧に挨拶すると、その二人の元にお茶を運んだ。

ドアを開けると、宇賀山が元気よく「こころちゃん、おはぁ。今日も可愛いね」とセクハラじみたことを言った。

そして、小日向も「よぉ」と手を上げた。

二人はお茶をこころから受け取ると話に戻った。しばらく聞き耳を立てていたが、どうやら気になる話題はないなと思った。

部屋を出ようとすると、宇賀山が何の意地悪か、「昨日のひなこちゃんとの電話楽しかったか?」と言ってるのが聞こえた。

こころは続きが気になったが、そこまでしか聞こえなかった。ある意味、わざと聞こえるようにウザ山小日向に話を振っていたので、ある意味協力してくれているかもしれないとも思った。

しかし、ウザ山はウザ山だ。こころはその後も注意深く、小日向を観察した。

すると、今日は小日向さんは何だかとても眠そうで、時々仕事中であるのにコクリコクリとしていた。

いつも仕事の鬼の小日向さんがそうなるのは珍しいので、こころは昨日の電話はかなり盛り上がって夜遅くまで話していたのだなと勘繰ったのであった。

ふと、隣から「こころちゃん、熱い視線が痛いよぉ」とキモい声が聞こえた。そう、ウザ山である。

こころは嫌そうな顔をして「何ですか」と鬱陶しそうに言うと、「僕にもそんな熱い目線送って欲しいのになぁ」とアホなことをほざいていた。

こころは「ウザ山は仕事してください」と冷たく言うと、パソコンに向き直った。そして、あ、ウザ山って思いっきり言ってしまったと思うが、まあこの人だからいいかと思い直したのだった。

宇賀山は「ウザ山!?」と驚きを隠さないで、こころに何やら文句を付けるのだった。