二人は定食屋を出ると、あまり人影のないベンチに座った。というのもこころが歩けないと駄々をこねたので、小日向は仕方なくそこに座ることにした。

こころは相変わらず訳の分からないことを言っており、いつも完璧なのに、こいつにもこんな残念な部分があるんだなと小日向は笑った。

こころはそれを見て、「なにがおかしいんれすか」とやはり呂律が回っていなかった。

そんなこころを小日向は可愛く思い、「ほら、大人しくしな」と頭をポンポンとした。

こころはあの冷徹で有名な小日向さんが絶対しないようなことをしたので、驚いた。そしてとても嬉しくなり、すんなり大人しくなった。

すると、また、「偉いぞー」と子供をあやすかのように接してくるので、さてはこの人も酔ってるなとこころは思ったのだった。

それからこころは思い立ち、小日向さんの胸ぐらを掴みキスをしようと顔を近づけるが、あと一歩のところで酔いが完全に回り、意識が遠のいてしまった。

こころは小日向さんが「おい、山田」と自分を呼んでる声がするなと思いながら、深い眠りについた。