小日向は今日は休みだったので、一人でジムに来ていた。特に友達がいない小日向が土日にせいぜいやることといったら、ジムかゴルフレッスンしかなかった。

この前、ひなこに「独身貴族極めてますね」と言われたが、自分でもその通りだと思った。たしかに、宇賀山は仲良いがあいつはまた別口だと小日向は思ったのだった。

いつもの様にストレッチをして、ランニングマシンをして、ベンチプレスに入ろうととしていると、「小日向さん」と涼しげな声が聞こえた。

上体を起こしてよく見ると、そこにはこころが立っていた。小日向は「山田か」と言った。

こころはいかにもなスポーツウェアを着ていた。こころとはいつもこのジムでよく会う。というのも、ここのジムは会社の制度で安くなっているジムであるからだ。

なら、宇賀山もいるのではないかと思うが、宇賀山は「俺こういうちまちましたの嫌いなんだよね。やらなくてもモテるし」と珍しく小日向が誘ったのにそんなことを言っていて呆れたのだった。

こころは「では」と言うと、自分の運動に戻った。

小日向はそれからいつものメニューをこなし、シャワーを浴びた。ここは設備がよく、どれも使いやすいのが良い。それに人が少ないので人が多いのが嫌いな小日向にとっては絶好の場所だった。

ジムから出ようとすると、ひょっこりこころが隣から「お疲れ様です」と声をかけて来た。

こころは「一緒にご飯に行きませんか?」と言うので、小日向は「あぁ」といつもの通り言ったのだった。