ついに花火大会の当日になった。ひなこは胸を躍らせながら教室に入ると、至って朝に弱い和真に「お前、テンション高すぎてウザい」と言われた。

しかしひなこはそんなことすら気にならないくらい気分が良かった。新しく紫と白の可愛らしい浴衣も買って、後は行くだけだとワクワクしていた。

美織にも意気揚々と「楽しみ」とLINEを送った。しかし、美織は「まだ何も連絡来てないから嫌な予感はするけどね」と危ぶむ返信を送ってきた。

するとひなこもそっかまだ来れない可能性もあるのかと急にテンションが低くなった。

隣の和真は一部始終それを見ており、「今日のお前のテンション、ジェットコースター並みで怖ーよ」と言われてしまった。

講義中、スマホが光った。するとそれは小日向さんからのLINEだった。

見事美織の予感は当たり、「すんません、上司の判断で結局会食決行となりまして、今日はいけないこととなりました」と小日向さんから来ていた。

さすが美織と思ったが、それは嬉しくない的中だった。

ひなこは「なんとな〜くそんな気がしてました笑」「小日向さんとはすれ違う運命なんですね」と送った。

ここのところ、二連続アウトなのでひなこは本当についてないなと思ったのだった。

小日向さんは「まじサーセン」「僕の分まで楽しんできて」と返信を送ってきた。

ひなこは「まぁこれでお互い様なんでノーカンですね笑」「楽しんできまーす」「小日向さんも会食楽しんでくださいね」と送った。

すると小日向さんは「何がお互い様なのか知らんけど笑」「会食言うてもお仕事なんで楽しめませーん」とすぐに返信が来た。

それに対してひなこは「ドタキャン笑笑」「これで矢田さんだったら面白い笑また鏑木の屋台出没してますねきっと笑」と送った。矢田さんとは最初に小日向さんと出会った時にいた小日向さんの会社の取引先の人である。元気にしてるかなとひなこは思った。

小日向さんからは「そんなことあったっけ?」と来たので「ほら」「前回の飲み、ごめんなさいしたじゃないですか、私が!」とひなこは返信した。

小日向さんはやはり「えっいつだっけ?」とまだ分からない様子だったので、「先々週の金曜」と送ると、オウム返しで「先々週の金曜?」と返事が来た。

ひなこは呆れて、「もう忘れたんですか」「コロロだからごめんなさいってやつです」と送ると、ようやく、「あーあれか、思い出した」と来た。

ひなこが「びっくりしました」「そんなすぐ記憶なくなるの怖いですよ」と送ると「そうね」と返信が来た。

「まあいつか会えますよ」「きっと」とひなこはさらに送ってみると、小日向さんからは「まあとりあえず楽しんで」と来た。

ひなこはこれで最後とばかりに「小日向さんも矢田さんと楽しんでくださーい」と送ると、小日向さんは、「矢田さんではないけども」とまだ返信が来た。

ひなこはなんとなくそうだろうなと思っていたが、もうちょっとLINEをしていたかったのでわざとそう送っていた。

小日向さんはそんなことは知るよしもなく、「矢田さんは、まじでレアキャラなんで」「こないだ飲んだの一年半ぶりよ」と続きの返信が来た。

ひなこは「えー!そうなんですね!あの日は結構楽しかった笑」「じゃあ明日は下っ端ですね」「ちょろいですね」とちょっと小日向さんをおちょくったLINEを送った。

すると、「全然違う会社の偉い人と飲むんですよ」「うちの上司も一緒ですわーダルッ」と小日向さんから返信が来た。ひなこはそのダルッというセリフがなんだかお茶目に思えて、いつもと違う小日向さんを可愛く思った。

ひなこは、「なるほど」「なら小日向さんが下っ端ということですね」「後輩キャラ演じましょ笑」とやはり下っ端を強調した。

すると小日向さんはそれに乗ってきて、「そうですね、クソ下っ端ですわ」と返信が来た。

ひなこは「お酒を注いで回るあれですね」「大人は大変ですね笑」「まぁ応援してますよ笑」と上から目線なことを送った。

小日向さんはそんなこと気にするわけでもなく、「あざます」「君もさっさと復活して大学に行きなさい」と返信が来たので、ひなこは「もう復活して、来てますよ!」「小日向さんの会食は12時過ぎまであるんですか?」と尋ねた。

小日向さんは「どうだろー全然あり得る笑」と送ってきたので、ひなこはやはり大人は大変だ、なりたくないなぁと思った。

そして「ひゃーーー」「それは大変だーーー」「今日は早く寝るべしですね!」「おやすみなさーい⭐︎」と陽気なLINEを送った。

小日向さんからは「うぃー」と返事が来たが、ひなこはなんだかそれがじじ臭く感じ、つい、「それは返信がおっさんですよ笑」と送った。

もう来ないかなと思ったが、小日向さんは「オッサンですよ」「34だもん」とまだ返信が来た。

ひなこはさりげなく、「34でそのかっこよさは反則ですけどね」「小日向さんて誕生日いつなんですか?」と褒めつつ、誕生日を聞いたが、「いやただのおっさんなんで」「誕生日とか迎えたくねぇ」「35になるとか死ねるわ」と誕生日は教えてくれなかった。

しかし、LINEは面白かったのでひなこはそれだけで満足したのだった。