その日はひなこは大学で一人だった。至ってつまらないいつも通りの講義でひなこは何度も睡魔に襲われた。

和真に何度もLINEを入れるが、反応はなく、一方、こういう日に限って佳音は「デートですぅ」というウザいLINEが来た。講義が終わると大きく上に伸びをし、「だーーーる」と呟いた。それで少しは気も晴れる気はしたが、微妙だった。

大学には近くに、コンビニがあり、そこでは一番くじがあった。ひなこは一番くじがとても好きで、今回のうさじいシリーズもラストワン賞を狙っていた。

今日はそんなに引くつもりではなかったはずだが、結果的に店員さんと仲良くなるまで引き、「お疲れ様です」と言われながらラストワン賞をもらった。全く恥ずかしい限りだが、計23回の達成感は怠かった自分の心を晴れやかにしてくれた。

せっかくなので、インスタに載せ、さらに小日向さんに送ってみた。しばらくすると、返信が来て「ちゃんと授業受けて」と諭された。ひなこは「ちゃんと受けましたよ?」「帰り道に寄ったら運命の出会いだったんです」「小日向さんとの出会いみたいな?」と余計なことを交えたLINEを送った。

その時ひなこはちょうど結愛(ゆあ)とLINEをしていた。小日向さんとLINEしていると言うと、彼氏がいるのにも関わらず、自分の写真を送れとせがむのでしょうがなく送った。どうせろくな返信は来ないだろうなと思ってるとやはり、「いや誰笑」といういつも通りの返信が来た。

ひなこは「可愛い結愛ちゃん」「東京にいますよ!」と送った。すると小日向さんは「そうですか」としか返信が来なかったので、「素っ気なくないですか?」「泣きますよ結愛ちゃん」と送ると、「逆光でよく分かりません」と返信が来た。ひなこは「確かに」と送ると結愛に指定された写真を送り直した。そして「こっちのがビジュがいいらしいです」とコメントも添えた。

ひなこは小日向さんはどんな返信をくれるだろうとワクワクしていると、「うぇーい」というよく分からない返信が来たので呆れた。しかし、結愛に興味を持たれなくて良かったとも思った。ひなこは「え?感想しょぼいです」「会いたいらしいです」「東京にいるなら会いませんかとほざいています」と結愛に言われたことをそのまま送った。

すると小日向さんはなんと「分かりました」と返信を送ってきたので、ひなこは焦って、「それはダメです、私が嫉妬します」「というか、いつまで東京にいるんですか」と送った。小日向さんはいつまで経っても東京出張から帰ってこないのでひなこは試しに聞いてみたのだった。

しかし、小日向さんはいつ帰ってくるかについてはスルーし、「どこが都合がいいですかね」とノリノリの返信が来た。ひなこは「本気で会う気じゃないですか」「何の嫌がらせですか」と怒った返信を送った。もしかして本当に二人が会ったらどうしようとひなこはそんなわけはないのに心配になった。

結愛から、「これ送ってよ」とひなこがディズニーに行った時の、たまたま撮れた顎が伸びた写真が送られてきたので、小日向さんにそのまま送った。すると、小日向さんは、前飲みに行った時に撮ったひなこの写真を送ってきた。ひなこはあまりの自分の写りのやばさに驚き、「それはもっとやばいです」「参りました」「削除依頼です」と送った。

その後は、小日向さんから返信が来なかった。

結愛からはなんか面白かったと好意的な返信が来たが、ひなこは自分の恥をさらしただけだったのではと不安になるのだった。

しばらくしてひなこは「どういう魔法を使えば小日向さんともう一回会えますか」と絵文字付きで送ってみた。すると、今度は返信が来て、「結愛さんか、佳音さんか、美織さんがいたらいいよ」と書いてあった。ひなこは心の中でオールスター揃ってるじゃんと毒づき、「女好きですよそれは」「んじゃ、美織か、佳音にします」「というか、帰ってきてるんですか」とまた同じことを聞いた。しかし、小日向さんはその後は返信は来なかった。

ひなこはいつも通りだなと思いながらも少し悲しくなった。しかし、自分がくよくよしてては掴めるものも掴めないと思い、空に向かって大きな伸びをし、また元気を出すのだった。