小日向さんが指定したのはタイ料理のお店だった。大きい商業ビルの地下一階に並ぶお店で、そこの店以外はひなこは割と行ったことある場所だなと思った。

ひなこはその日は車で鏑木市まで来ていた。というのも、講義が長引き間に合いそうになかったからである。

運転していると、美織から連絡があった。「8時半無理そう先行ってて」と来ていたので、「おけ」「私もぎりだ」と返信した。

すると、「行くのだいぶだるくない?笑」「そうでもない?」と返信が来た。

ひなこはまたかと思った。気まぐれの美織はたまにこういうことがある。これに付き合ってたら埒があかないと思ったが、仕方なくLINEを続けた。

「いや今週のモチベこれだから」と送ると「これモチベやったん」と返ってきた。

そしてしばらくやりとりしてると「今日NG出していい?」ととんでもないLINEが来たので、「え?」と返すと、「気分が乗らない」「すまん」と来た。

ひなこはありえないと落胆したが、「なんでよ」「美織行かないなら行かないよ?」と返すと、「いや、やめとけよそれは」と何様のつもりという感じのLINEがきた。

というのも、美織がなんの気を利かせたのか、二人はどうですか?といらないことを聞き、NGをくらっていたのだ。そのせいもあり、今更二人と言って、来なかったらひなこは嫌だなと思ったからである。

そのことを言うと、「しかたないやん」と返って来たのでひなこは呆れた。

「キャンセルなら全部キャンセル」だと主張すると、「意味が分からん」と来て、「いやそーやろ、ふつうに」と返すと、「なんで?」と来た。

段々ひなこはめんどくさくなり、「二人なら行かないよ?」「あんたが行かないなら私も行かない」と荒く返信すると、「いやあんたて言うなよ」と返ってきた。

「どうするん?」と言うと、なんと「じゃー二人で行ってきます」と来たので、「どういうこと?」と聞くと、「美織と成瀬さん」と言うので、ひなこはもうお手上げだと思った。

「いいけどよく分からん」と返すと、「さすがに行かない訳にはいかんやろ」とすぐに返信が来た。

それなら最初から行くと言ってくれればいいものの、相変わらずめんどくさい女である。

しばらく色々こっちから送ってると、「準備してるから静かに待っててもらっていい?」とようやく話がまとまった。

ひなこは「はぁ」と赤信号でため息をつくと、まぁどうにかなったかと暗くなる空を見上げたのだった。