「それはなんていうか…根拠のない言葉だね…」


「あはは、たしかにそうだよね。小学生の時の話だし、その子とは俺が引っ越してから会ってもないんだけど、たしかに俺を救ってくれた。そんな言葉一つで頑張れるなら何も苦労はしないよって感じなんだけど、不思議と俺の心には響いたんだ。もう少し頑張ってみようって思えた。だからね、明日香。明けない夜はないんだよ。どんなに辛くて苦しくても必ず朝は来る。今の明日香は、苦しい日々を耐えたからこそ幸せになったんじゃないのかな」



…違うよ、朝陽。私は逃げたんだ。


希望なんて何もない毎日から逃げた結果、たまたまこの幸せを手に入れてしまったんだ。私はなんてずるいんだろう。



「…明日香?どうして泣くの?」


「…違うっ。私に明日なんてあっちゃだめなんだよ…っ」



楽して手に入れた幸せなんてきっといつかなくなってしまう。


朝陽たちと離れてしまうかもしれない未来が、どうしようもなく怖かった。



「じゃあ、もしも明日香が辛くて苦しくてもう無理だってなったその時には、明日(明日香)(朝陽)が照らすから」


「…え?」


「必ず俺が助けるから」



優しく涙を拭ってくれた朝陽が、そっと唇を重ねてきた。


遠くで花火の音が聞こえていたけど、今はもう何も聞こえなかった。



私は今になってやっと気づいた。


この世界で私は朝陽に恋をしてしまったのだと。