もう一度、誰かを信じてみようと思えた。



「一歩を踏み出すことで見える世界が変わるんだって私は知った。だから汐江くんも、今はまだ怖いかもしれないけどもう一度、大切な誰かを作ったっていいんじゃないかな…」



汐江くんがふっと優しく笑った。



「如月さんの方が俺なんかよりも全然厳しい人生歩んできたんだね。…俺も、頑張ってみるよ」


「え…」


「如月さんが、俺の背中を押してくれたから」



汐江くんの笑顔を見ていたら、涙が込み上げてきた。



「え、ちょ、なんで泣くの…!」


「だって…」



汐江くんが前向きになってくれて嬉しかった。


そんな簡単にすぐ変わることなんてできない。それは、私が身を持って一番よく知っている。



それでも、汐江くんが一歩を踏み出す勇気を私があげられたら。


いつも私がしてもらっているように、汐江くんの力になれるなら私はどんなことだってできる。


そう、心から思った。