夜が明けたら君に幸せを。

「…理由なんて、別にどうでもよくないかな?」


「…え?」


「如月さんの過去に何があったのか私は知らないけど、私と昔の如月さんを重ねたって別にいいじゃん。それで助けてくれたんなら、重ねてくれてよかったよ私は。つまりさー結果的には、如月さんは私を助けてくれた。如月さんは私のヒーローだよ」



思ってもなかったことを言われ、優しく微笑む柏木さんをぽかーんと間抜けな顔で見つめてしまう。


どう…して。


どうして、いいよなんて言えるの…?



「わた、しは…」



–––『明日香なんていなければよかったのに」



「…っ!」



…そうだ。何を勘違いしそうになっていたんだ。



「…また、絡まれないようにね。じゃあ」


「え、きさら…」



戸惑ったように引き止めようとしてくる柏木さんを無視して、カラオケ店を出る。


そうだ。私が誰かのヒーローになんてなれるわけがないのに。


なにを調子に乗って嬉しいとか思っているんだ。