もっと早く玲音の異変に気づくべきだったんだ。


こんなに苦しいのは世界中で私だけだとずっと勘違いをしていた。


こんなにも近くに同じように苦しんでいた人がいたというのに。知ろうとしなかった。



「明日香…!」



ぼさぼさな姿でお母さんが病室に駆け込んできた。



「お母さん…?」


「ああ、意識が戻ったのね…!もう三日もずっと眠っていたのよ。私…明日香まで失ってしまうんじゃないのかって怖かった。何もうまくいかなくなってから、ずっと明日香に八つ当たりしてひどいこともたくさん言ったくせに今更許してもらえないかもしれない。…だけど、明日香は何よりも大切なの。これは本当だから…」



震えていたお母さんの手をそっと取る。



「…うん、わかってるよ。ちゃんと、わかってる」



たとえ夢だったとしても、朝陽が私にくれたものは全部(ここ)に残っている。



––––– 「じゃあ、もしも明日香が辛くて苦しくてもう無理だってなったその時には、明日(明日香)(朝陽)が照らすから」



過ごした時間も、言ってくれた言葉も、触れた温もりも全部忘れない。


朝陽は私を照らしてくれる光だから。


もう二度と会えなくても、想いが伝えられなくても、ずっと消えることなんてない。