光がない世界で生きるのは、心を殺していくのと同じだった。


そんなボロボロに傷ついて泣いていた私の心に手を差し伸べてくれたのは、いつだって朝陽だった。



「私は高校で、もう一度信じたいと思えた人たちと出会った。一歩を踏み出すことは怖かったけど、私はその人たちに救われたよ。毎日が楽しくて、幸せで、忘れていた気持ちをたくさん思い出した。お父さんがいた思い出は全部苦しくて憎いものだけじゃないよ。楽しかったこともたくさんあった。お母さんにとっては初恋で、本当に大切な人だったって知ってる。だから忘れなくたっていいんだよ。少しずつ過去に、思い出に変えていこうよ。私と前に進もうよ」



私がお母さんに寄り添ってあげるべきだったんだ。


朝陽が私にしてくれたように。



「私はお母さんの子どもでよかった。産んでくれて、ありがとう」



ぽたぽたと写真に涙が落ちる音が、静かなリビングに響いていた。



「お母さん…?」



お母さんは静かに泣いていた。



「…何も、知らなかった。明日香のこと、知ろうともしなかった。あの人が出て行ってから何もうまくいかなかったから。毎日すごくイライラして、お酒を飲んでいる間だけは全部忘れられたから。私は私を守るだけで精一杯だった…」



私がお母さんを守れるくらい強かったらよかったのに。


時間が解決するなんてそんなの嘘だ。時間が経てば経つほど、大切な人を失った悲しみは大きくなるばかりだから。



「私はまた大切な人を自分で失おうとしてたのね。ひどいことたくさん言ってごめんね…。明日香のことちゃんと見てなくてごめん…っ」



泣き崩れてしまったお母さんをそっと抱きしめる。



過去は変えられないけど、私たちには未来がある。


辛くて苦しんだならその分幸せになればいい。幸せがきっと待っている。



大丈夫、私たちは前に進める。ここからやり直していこう。