エルモたちはグルの転移魔法で、王城から一瞬で、乗ってきた荷馬車の荷台に移動した。

「はあ、終わった。転移の魔法陣を描く暇がなくて、杖を使っちまって魔力がガッツリ減った」

「でも、終わったね」

「ああ終わった、腹減ったぁ――!」

 みんなで荷台の上にごろ寝した――熱病も無事回避したし。あれだけ言ったのだから、エルドラッドも諦めて二度と追ってこないだろう。

 だけど、リリアさんが王妃教育かぁ。彼女、けっきょくは逃げだすかも……

 そうなったら新しく教育がすんだ令嬢、隣国の王女をお妃に迎えればいいだけのこと。
 エルドラッド皇太子殿下にとことん甘い、国王陛下と王妃がお妃をみつけるだろう。

 とくに甘い、甘い王妃なら「位ならどうにかするわ。あなたの好きな人をお嫁さんにもらいなさい」とでもいうに違いない。

 それだから婚約破棄のときも「あら、そうなの?」と言って。さっさと婚約破棄の契約書、書類に判を押した。
 エルドラッドが愛するリリアが、王城であんな事をしても黙認していたみたいだし。

(私は熱病が王都に広まらなかったから、それでいい)

 ふうっ、なんだか疲れた。
 
 同じように疲れたグル、グレと、荷馬車の中でしばし疲れを癒した。