「いやです、公爵令嬢にもあなたの婚約者にも戻りません! ……私、最愛の人と結婚いたしましたの。ねえ、グル」

 彼を見つめると、コクンと頷いのたけど。

「ごめん」
「え、なにが?」

「まだ、勉強不足で……こ、言葉が片言しかわからない。そいつ、さっきからなんて言っているんだ? エルモをみつめて、すごく不愉快なんだけど」

「え、ファーレズ語は?」

「断片的にならわかる。すこし前に飲んだ言語の魔法薬がきれてしまったんだ……しばらく使えない」

 もう一度あやまり。ごめんと、シュンとするグル。

「……フフ、わかった。会話の簡単に説明をすると。エルドラッド皇太子殿下は、私に婚約者に戻れると言っているの」

「はあ? エルモを婚約者に?」

 会話の内容がわかって、グルはエルドラッドを睨みつけた。

「な、なんだ君は?」
 

「……エルモは出会ったころ、すごく傷付いた寂しい瞳をしていた……エルモを傷付けて婚約破棄したくせに……もう遅い! エルモは俺の嫁だ、おまえにはわたさない!」