妃殿下のご予定日まで後20日ある。
1週間後、ウチに殿下がやって来る、
ヤァ、ヤァ、ヤァ!


ご出産がご無事に済むまでと、あの2人は俺に
言ったが、信用は出来ない。

生まれたばかりの御子様をお守りする為もう少しだけ、などと言い出したら?


もし御子様の首が座るまで、
ハイハイして立っちするまで、
御一人で殿下から避難出来るまで、
なんて……何年も滞在を延ばされたら?


人事部長は殿下がウチに滞在した日数を、その後君の特別休暇にしよう、なんて調子良く言っていたが。

俺はその後……何年休む事になるんだ?
その間の給料は何パーセントカットされるんだ?


全然旨味は感じられない話だ。


自宅に戻って着替える間もなく、父以外の家族に殿下襲来を伝えた。


天 : 「まぁ、殿下がウチに?」

魔 : 「今度はウチに逃亡か……」

母 : 「やはり『天使の間』しかないわね?」

母は全く動じず、滞在の算段を口にする。
魔女よ、王宮から逃亡したんじゃないからな、
あえて言うなら追放だ。


天使の間のベッド関係は取り替えよう。
愛するグレイスがひと月眠った後だ。
殿下だろうと、同じベッドは使わせない。


そこに父も帰宅した。
早速家族会議を始める。

俺は父には言いたいことが多数あったが、母は
過ぎた事を言うのを好まないので我慢する。
ウチの内政を取り仕切っている母が絶対的権力者だからだ。