二年後

 アントニーの伯父バーニー・クインは、逮捕の後離縁された。そのときには、パウエル公爵家も彼を除籍していた。カーリーの婚約者でもあるクリフ・レッドフィールド警視正、通称大熊さんたちの地道な調査が功を奏し、余罪が次々に明らかになった。

 伯父様が薬と称して毒を服用させ、殺した患者は少なくない。さすがにどこのだれが殺されたのか、というところまではわからない。アントニーは知りたがったけれども。自分自身や彼の両親も被害者で、伯父様がパウエル公爵家とは関係がなくなったとはいうものの、気に病まずにはいられないのである。

 彼は、多くの被害者自身やその親族や親友といった関係者に謝罪に行きたがった。

 しかし、情報は得られなかった。こればかりは、大熊さんも「うっかりもらしてしまった」的なことはしてくれなかった。

 アントニーと二人で亡くなった方々へ黙祷し、生きている被害者や関係者たちには申し訳ないと謝罪の念を抱くことを、ほんのわずかながら心の慰めにした。

 伯父様は、断罪された。

 わたしの方の叔父は、叔母と従姉とともに国外追放となった。

 もう二度と会うことはない。

 子どものときから肉体的、精神的に痛めつけられている。
 意地悪であるが、もう二度と会いたいとも思わない。

 わたしが不治の病の上精神的におかしい、という診断書を書いたのは伯父様だったらしい。

 これは、たまたまというわけではない。両者は一応親族だから、ある意味結託したに違いない。

 わたしにとっては、迷惑以外のなにものでもないのだけれど。

 クイン伯爵家の伯母とその娘は、伴侶となる適当な医師を必死に探しているらしい。

 伯母は、前々夫に復縁を迫ったらしい。が、当然かなうわけもない。前々夫だけではない。もとから男癖が悪いことで有名な伯母と結婚しよう、などというもの好きな医師はいない。

 クイン伯爵家という名家も、伯母がその名を穢してしまったようなもの。もっとも、わたしのアルフォード家も他家のことは言えないのだけれど。

 アルフォード伯爵家は、王家が認めた管理人が管理をすることになった。

 アントニーとわたしの子どもが成人した後、その子どもが継ぐ予定になっている。


「こらこら天使たち。髭をひっぱらんでくれ」

 子ども部屋は、今日もまたにぎやかである。

 カーリーとその夫の大熊さんが遊びに来てくれたのである。

「アーチャーの休憩所」のスイーツを持参して。

 彼女たちは、わたしが双子の赤ちゃんを出産したすぐ後に結婚をしたのである。

 カーリー曰く、「仕方がないのよ。まあ、よくある成り行きって感じかしら」ということだったけれど、何が仕方がないのかまでは教えてくれなかった。

 床の上で胡坐をかいている大熊さんに、双子はよじ登って髭をひっぱったり髪の毛をひっぱったりしている。

 大熊さんは大きな体と強面なわりには、子どもが大好きすぎるのである。可愛くって仕方がないらしい。

 だけど、カーリーはまだ医師を続けたいので、子どもはお預け状態みたい。いまのところは、だけれども。

 パウエル公爵家が援助し、二年前からマークが医師を目指して王立大学で勉強をしている。彼は、もともと大学に入学するべく勉強をしていたのである。とはいえ、医師になるにはかなりの年数が必要になる。その為、いま現在医師をしているカーリーの後輩にあたる医師たちをカーリーの診療所にひっぱってこれないか、誘っているところである。

 カーリーもしばらくの間だけでも自分の代理をしてくれる医師がいれば、出産や育児のことを前向きにかんがえてくれるかもしれない。

 大熊さんとアントニーとわたしは、そう期待している。