北斗(ほくと)が目を開けると、そこに広がっていたのは見知らぬ場所だった。

果てしない闇が広がり、どこからか誰かの悲鳴のような不気味な声らしきものが聞こえてくる。足元はゴツゴツとした岩のようなものでできており、走ると転んでしまいそうだ。

「ここは……どこなんだ……?」

周りを見渡し、北斗は疑問を口にする。北斗は着物職人として日々修行をしており、昨夜も疲れた体を布団に沈め、すぐに眠りに着いたはずだ。つまり、ここは夢の中のはずなのだがーーー。

「すごく不気味だな……」

呟いた言葉は暗闇に消えていく。空気がやけに冷えており、北斗の体にゾクリと寒気が走った。

夢というものは普通ならば曖昧で、寒さや暑さなどは感じないはずだ。だが、夢にしては自分の意識がはっきりしており、寒さなども感じることができる。それが不思議で、同時に不気味でもあった。

(まるで、眠っている間に誰かに全く知らない世界に連れて来られたみたいだ……)