『大抵のことは努力で賄える』


誰かに教えて貰った言葉だったか、
本に載っていた言葉だったか。
困難を前にすると、そう自分を奮い立たせた。


少女の母親が少年との婚約を望んだのは、
多分祖母のせいだろうと、思った。
祖母と息子の嫁である母親の仲は悪い。

父親は祖母が決めた結婚相手を袖にして、
母親と結ばれたので
嫁入り前から色々言われたらしい。
母親は口にしないが、侍女長からそう聞いた。

母親はいつも祖母の前では笑顔でいたが、父親に知られないよう、よく隠れて泣いていたという。


不仲が決定的になったのは母親が後継の男児を
生めなかったことだ。

どんな祖母の言葉が母親を追い込んだのかわからなかったが、結婚した少女が自分と同じように
姑に苛められないように、
母親はまだ幼い少女を抱きしめて決意したのだ。