「そうです 
 あの女は国に戻ってしばらくして自分が妊娠していると、気づきました
 まだ未婚の娘が身籠ったことなど父親が許す
はずもないが、愛した男の子供なら産みたい
 あの女はそう考えて、代わりに父親になる男を探しました
 それで並み居る求婚者の中で、公爵閣下に一番近い色を持つノーマンに、目を付けたのです
 幸いな事に、やつは三男で婿に取れるし、
もし先に妊娠していたことがばれても、実家の力は大した事はない
 それでノーマンを使おうと、考えました
 だが行為をしないと子供が出来たと言えない」

「それで何度も一度だけでいいからと?」

カフェで聞いたクリスティン様の声が甦って
来ました。


ノーマン様を、あんなに愛していると。
ノーマン様に、貴方に愛して欲しいと。
切実に訴えられていたけど、どこかお芝居の台詞のように聞こえていたのは……嘘だったから。


本当はノーマン様のことを愛してなんかいなかった。
単に髪と瞳の色が愛するひととよく似てるから。
それで……?

それで、どうして愛してもいない男に、
何度も愛を囁かなくてはいけなかったの?