まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました

「やっぱり綺麗だなあ」

 仕事が終わったその足で私は巧さんと結婚式場に来ていた。目の前には大きな教会が立っていて、その奥には美しい日本庭園が広がっている。

「さっきは来てくれてありがとうございました」

 スタッフの人を待っている間、私は改めて巧さんに頭を下げる。

「ああいいのいいの。連絡もらって、あの部長にまた困らされてるんだろうなって思っただけだから。ああしとけば少しは俺のせいにできるでしょ」

 冗談まじりに笑いいつも通り優しい巧さんに私はいつも癒されている。本当は社長令息の婚約者なんて務まるはずないのに、彼といるとそんな不安も感じなくなる。

「相馬様でいらっしゃいますね。お待たせいたしました、ご案内します」

 そこへスタッフの男性が、まだオープン前で中に入れないよう張られたロープの向こう側から現れた。

 中へ進んでいくと、和と洋の調和というべきかどこか不思議な光景が広がっていて入り口には【月島園tokyo】との看板の文字が見える。ここは大手ホテルチェーンの月島リゾートがウェデイング業界に進出を決めてから初めて建設された一号店だ。 

 巧さんの両親が月島グループのリゾート会員で古くからの付き合いがあるから、記念すべき一組目として式を挙げられることになっていた。ずっと建設途中だった会場が先日ようやく完成したとのことで初めて足を運んだ。

「こちらがチャペルになりましてそのままガーデンスペースへ降りられるようになっております」

 次から次へと会場内を案内され洗練された雰囲気に圧倒される。