「うちはどうなっちゃうんだろうね」

 シボリを抱え私も階段をあがっていく。

 母は会社のことなんて何も知らず、どれほど大変な状況なのかもいまいち理解していない。ただひとつクレジットカードをとめられて大好きな買い物ができないと嘆いているくらいだ。

 しかし破産寸前と考えれば、遅かれ早かれこの家も手放さなくてはならない日がくるだろう。

 私が小学生の頃母好みに建てられたモダン風の家は五LLDKと無駄にだだっ広い。シボリ専用の部屋が私の隣の部屋にできるほど持て余していた。

 ちょうど執務室の前を通ると扉の隙間から険しい顔で誰かと電話をしている父を見た。

 部屋に戻りそのままベッドにダイブする。鼻息荒くベッドの上を歩き回るシボリを見ながら柔らかい枕にぎゅっと顔を埋めた。