まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました

 翌朝、目が覚めた私は天井から下がる煌びやかな照明を見て飛び起きる。

 ずきんと痛む頭に顔を歪めて辺りをキョロキョロ見渡すと、どこかのラグジュアリーホテルの一室にいた。それも高そうなスイートルームだ。

 訳がわからないままベッドから抜け出そうとした途端、自分の姿に驚愕する。なぜかキャミソール一枚で眠っていた。

 慌てて布団を手繰り寄せ、自分の置かれている状況が理解できないまま固まる。どうにか思い出そうとはするものの、まるで昨日の記憶はなくそのまま布団に顔を埋めた。


「起きたか」

 そこへ男性の声が聞こえてきて、驚いて顔を上げれば一哉さんがいた。

 頭からバスタオルをかぶり濡れた髪の毛を拭きながら現れた彼はズボンだけを履いた状態で、私は思わず目を逸らす。頭の中で想像ばかりが一瞬にして膨らんだ。

「何もしてないからな」
「へ?」
「暑いって言いながら自分で脱いだんだ。勝手な想像されても困る」

 だんだんと顔が熱くなる。

「別に変な想像なんて……」

 布団に絡まった服を見つけて慌てて袖を通し、やってしまったと後悔した。恐る恐る独立したベッドルームから出て行くと、一哉さんはモダン調の大きなソファで優雅にコーヒーを飲みながら座っている。

「ちなみに私は何かご迷惑を……、何も覚えてなくて」

 彼に声をかけながら近づいていったが、言いかけた言葉を飲み込んですぐに視線は他へ移された。