まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました

 重いまぶたを薄く開けると私は宙に浮いていた。一哉さんの胸に頭を預けながら彼の腕に包まれている。

 機械音が鳴ってどこかの部屋へ入っていく彼は、私は柔らかいベッドの上にそっと置いた。体中の力が抜けて重力に身を委ねると、軋む音ともにベッドが少しだけ沈んだ。

「たく……みさん」

 おぼろげな意識の中ゆっくりと近づいてくる顔に、無意識にそう口にしていた。これが夢なのか現実なのか分からないふわふわとした感覚に包まれながら、触れる唇が何度も角度を変えて絡み合う。

「結」

 耳元で相馬さんが初めて私を〝結〟と呼んだ。夢であっても嬉しい。このまま時が止まって、この夢の中にずっといたいとさえ思う。

 遠のく意識の中で私は彼を離さないようにぎゅっと背中に手を回した。