「電話に出ないから心配した。慌てて車で追いかけてきたが、まだ会場に入る前で安心したよ」
「電源を切っていたので。これはどういうこと?」
一緒に後部座席で並ぶ父がゆっくり私から手を離すと、目の前で頭を抱えだし顔が青ざめていくのが分かった。
「終わったんだ」
「え?」
いまだ理解できないままそこから先に続く言葉は想像もできずにもう一度問いただそうとしたが、父の表情を見たらただ事ではないのはすぐに分かりごくりと唾をのみこんだ。
「ごめんな、結。本当にすまない」
あまりに重い空気が車内に漂い、弱弱しい声に胸が締め付けられる。何度も謝る父が小さくなっていくのを感じてそっと背中をさすることしかできなかった。
「ずっと黙っていたことがある」
数分後、神妙な面持ちでやっと何かを切り出し始める。
「ここ数年経営状態が悪化していてな。雇っていたみんなに休みを取らせたのもうちに余裕がなくなってきたからなんだ」
「そんな」
思わず言葉を失い、父の背中をさすっていた手が自然と震えだした。
「そして今朝、最後の融資先から断りの連絡が入った。なんとかもう少しとお願いしてみたんだが……。これでうちの会社はもう破産同然だ」
愕然とする私の手から鞄が抜け落ち、床に重い音を立てた。
「今日のお茶会は欠席しなさい。きっと皆さん噂を耳にしているはずだし、行っても結が嫌な思いをするだけだよ」
その言葉でさっきまでの周りの態度が一気に繋がっていった。みんな手のひらを返したように冷たく突き放し、今まで築いてきたものがいとも簡単に消えていってしまう現実に悔しさを覚える。
「電源を切っていたので。これはどういうこと?」
一緒に後部座席で並ぶ父がゆっくり私から手を離すと、目の前で頭を抱えだし顔が青ざめていくのが分かった。
「終わったんだ」
「え?」
いまだ理解できないままそこから先に続く言葉は想像もできずにもう一度問いただそうとしたが、父の表情を見たらただ事ではないのはすぐに分かりごくりと唾をのみこんだ。
「ごめんな、結。本当にすまない」
あまりに重い空気が車内に漂い、弱弱しい声に胸が締め付けられる。何度も謝る父が小さくなっていくのを感じてそっと背中をさすることしかできなかった。
「ずっと黙っていたことがある」
数分後、神妙な面持ちでやっと何かを切り出し始める。
「ここ数年経営状態が悪化していてな。雇っていたみんなに休みを取らせたのもうちに余裕がなくなってきたからなんだ」
「そんな」
思わず言葉を失い、父の背中をさすっていた手が自然と震えだした。
「そして今朝、最後の融資先から断りの連絡が入った。なんとかもう少しとお願いしてみたんだが……。これでうちの会社はもう破産同然だ」
愕然とする私の手から鞄が抜け落ち、床に重い音を立てた。
「今日のお茶会は欠席しなさい。きっと皆さん噂を耳にしているはずだし、行っても結が嫌な思いをするだけだよ」
その言葉でさっきまでの周りの態度が一気に繋がっていった。みんな手のひらを返したように冷たく突き放し、今まで築いてきたものがいとも簡単に消えていってしまう現実に悔しさを覚える。


