まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました

「相変わらず仲良いね」

 そこへ彼が現れた。ゆったりと落ち着いた口調が降ってきて、自然と私の座る椅子に手が添えられる。

「巧さん」

 背中に少しだけ彼の手が触れて、その温もりにぶわっと顔が熱くなった。

「日曜日なんだけど、出先からそのまま向かうから会場集合でもいいかな」
「も、もちろんです」
「よかった、じゃあ当日に。レイナちゃんお邪魔しました」

 いつも突然現れるから心臓に悪い。レイナも名前を呼ばれて目を合わせたあたりから頬を赤く染めているし、ラウンジを後にする彼には周りの注目が集まっていた。

「やっぱりかっこいいなあ巧さん。紳士的だし大金持ちの御曹司なんてハイスペックすぎるでしょう。欠点とかないの?」
「んー、どうかなあ」

 笑って箸を動かしながら、ふと私も考えてみたけれど欠点なんてあるのだろうか。

 『ニンジンはどうしても苦手なんだ』とお皿の端っこにはじいている可愛い欠点くらいしか見たことはなくて思い当たる節はどこにもなかった。

「日曜はどっか行くの?」
「いつものお茶会」
「ああ、結が苦手なやつね」

 瞬時にそう察した彼女に渋い顔を見せる。

 お茶会は両親の代わりに出席しているいわば会社同士の交流会のようなもの。年配の女性たちが多く集まる場でいつも気を遣い、何度行っても慣れなかった。