まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました

 あまりにも平然と言うからさっきまででていた涙も引っ込んでしまった。呆気に取られ、あのとき悩んでいた自分が馬鹿らしく思えて笑えてきた。

「結」

 くすくすと笑えていたら、突然真剣な顔でキスを落とされる。額、瞼、鼻、唇とゆっくり降りてきた唇に顔が熱くなり、緩んでいた空気が急に引き締まる。

 ゆっくり離れた一哉さんは私を真っすぐ見て逸らさない。シボリは空気を読むように膝から飛び出していき私たちはふたりっきりになった。

「もう不安にさせない。君以外何も欲しくない」

 鼓動の音がうるさくて聞こえてしまわないかとドキドキする。間近で綺麗な瞳にとらえられ今にも心臓が破裂しそうだ。

「俺と結婚してくれないか」

 ポケットから取り出した小さな箱は私の目から大粒の涙をこぼす。

 驚いて両手で口をふさいだ私の左手をとり薬指にスッと差し込んだ。見つめ合う私たちは自然とひきつけ合うようにもう一度キスを交わす。

「愛してる」

 耳元で囁く彼の甘い声に包まれて、もう二度とこの人の手を離したくないと思った。