式場見学に行ってから一週間ほどが経った今日は、朝から家の中が騒がしかった。
「結、大丈夫?」
最上階にあるガラスばりのスカイラウンジでお弁当を食べていると、向かいに座っていたレイナが心配そうに顔を覗き込んできた。
「朝からぼーっとしてるけどなんかあった?」
「うん、ちょっとね」
苦笑いを浮かべる私は今朝の出来事を思い返す。
『お手伝いさんがどこにもいないのよ。どういうこと?』
今まで私が仕事に行く時間に顔を出すことはほとんどなかった母が珍しく二階からリビングへ降りてきた。生粋のお嬢様気質でひとりでは何もできない母にとってそれは一大事だった。
たしかに広い家の中はいつも以上に静かで、一番長く仕えてくれている小林(こばやし)さんだけがひとりキッチンで朝食を用意してくれているだけ。他に十人ほど雇っていた人たちの姿は影すら見なかった。
父は『ずっと長期休暇をあげられていなかったから休みをとらせたんだ』と説明していたけれど、なんだか様子がおかしくて少し気になった。
優しくて穏やかな父は最近よく頭を抱えて怖い顔をしている。部屋にこもってため息をつく日も増えて、なにかに悩んでいるようにも見えて胸騒ぎがした。
「もしかして巧さんとなにか……」
またぼんやりと考え事をしてひとりの世界に入ってしまった。
「ううん、家の方で色々あったんだけど大したことないの」
きっと考えすぎだろう。
私はレイナに心配かけまいと笑顔で返し、話題をすり替えようとした。
「結、大丈夫?」
最上階にあるガラスばりのスカイラウンジでお弁当を食べていると、向かいに座っていたレイナが心配そうに顔を覗き込んできた。
「朝からぼーっとしてるけどなんかあった?」
「うん、ちょっとね」
苦笑いを浮かべる私は今朝の出来事を思い返す。
『お手伝いさんがどこにもいないのよ。どういうこと?』
今まで私が仕事に行く時間に顔を出すことはほとんどなかった母が珍しく二階からリビングへ降りてきた。生粋のお嬢様気質でひとりでは何もできない母にとってそれは一大事だった。
たしかに広い家の中はいつも以上に静かで、一番長く仕えてくれている小林(こばやし)さんだけがひとりキッチンで朝食を用意してくれているだけ。他に十人ほど雇っていた人たちの姿は影すら見なかった。
父は『ずっと長期休暇をあげられていなかったから休みをとらせたんだ』と説明していたけれど、なんだか様子がおかしくて少し気になった。
優しくて穏やかな父は最近よく頭を抱えて怖い顔をしている。部屋にこもってため息をつく日も増えて、なにかに悩んでいるようにも見えて胸騒ぎがした。
「もしかして巧さんとなにか……」
またぼんやりと考え事をしてひとりの世界に入ってしまった。
「ううん、家の方で色々あったんだけど大したことないの」
きっと考えすぎだろう。
私はレイナに心配かけまいと笑顔で返し、話題をすり替えようとした。


